2020/09/13

関門海峡の地質と歴史【動画あり】(Geology and histoy of the Kanmon Straits in Yamaguchi, southwest Japan)


中国自動車道の西端につながる下関ICと九州の門司ICの間に関門海峡を渡る関門橋が架かっていますが,この関門橋の本州側が‘下関市 みもすそ川町 壇之浦(だんのうら)’になります。この地域にどのような岩石が分布しているのかなど考えたことのある方は少ないと思います。今回は歴史の話なども交えて簡単に解説してみたいと思います。


写真_橋
関門海峡に架かる関門橋




本州側の国道9号線沿いに,関門橋の橋脚の建っている所から少し北にいくと,バス乗り場の御裳川(みもすそがわ)停留所があり,このそばに人道トンネルの人道口があります。この海側を見ると,関門自動車道のめかりPAのある門司区の和布刈が目に入りますが,門司埼灯台あたりとの間の関門海峡の最も狭まった箇所が早鞆の瀬戸と呼ばれていて,潮流が最も早くなる場所で,大潮の時には速度が10ノットにもなるそうです。関門海峡は,1185年(文治元年または寿永4年)の4月25日(旧歴3月24日),源範頼と源義経たちによって平氏一門が攻め滅ぼされた ‘壇ノ浦の戦いなどで有名な場所です。壇ノ浦の合戦の場所は,長府前田の沖合から干珠島・満珠島あたりまでの広い範囲だったようで,潮流はそれほど戦況に関係していないといわれています。東へと流れる潮の流れに乗れば,合戦場の位置というか相対的な両軍の位置関係は変わらないとしても,西側にいた平氏軍と東側の源氏軍のどちらが有利だったかといえば,東西の両軍がぶつかるわけですから,やはり平氏のほうが有利だったことは,間違いないと思います。源義経が手柄をたてようと,無理やり先陣を切って奮闘した上,平氏軍が有利と思える中,源氏側が平氏軍の乗る船の船頭をあやめるなど戦の掟破りをし,合戦後の行いとして源頼朝に忠義を見せなかったことで,源義経が奥州までの苦難の道を歩むことになったのも,自然の成り行きのように思えます。しかし,奥州藤原一族の家臣である杉目太郎が源義経の身替わりとしてその首が鎌倉に送られ,義経は北海道に渡ったという記録が残っています。その後,ロシアに渡った痕跡もあるようです。チンギスハーン説は疑わしいですが,興味深い話です。

1863年から1864年にかけて,長州藩とイギリス,フランス,オランダ,アメリカとの間で下関戦争(馬関戦争)が関門海峡で起きています。火の山の南東側の前田には砲台跡が残っており,ここから外国艦船に砲撃を加え犠牲者が出ました。門司側には山の中にひっそりと4人のフランス人の慰霊碑が建てられています。



壇ノ浦の合戦場(写真の右上には干珠島がポツンと浮かんでいる)


下関市と北九州市を隔てる関門海峡の潮流やトンネルの基盤岩などについて動画にしてみました。

関門海峡の潮流と地質

動画でも説明したように,関門トンネルの岩盤は,前期白亜紀関門層群脇野亜層群の湖沼成堆積岩と,これに貫入し熱変成を与えるひん岩から主に構成されています。海岸部には約1億3000万年前の脇野亜層群の堆積岩が熱で変成して硬くなったホルンフェルスが露出しています。日本の地質7「中国地方」の第6章応用地質,206ページに,関門橋や関門トンネルの地質断面図が掲載されています。花崗岩類は関門トンネルの門司側の沿岸付近の地下に貫入している程度です。関門層群脇野亜層群の堆積岩が硬質で珪化しているようになっているのも花崗岩やひん岩などが貫入しているためでしょう。

ひん岩は,関門層群下関亜層群の形成時期に貫入した中性(安山岩質)の半深成岩ですが,これは,壇ノ浦パーキングエリア付近と,JR門司港駅から北東の沿岸などに小規模に分布しています。下関亜層群の時期は火山活動が活発な時期で堆積岩よりも火山岩の割合が非常に多い地層です。この時期はちょうど地球磁場が安定した時で,1億1000万年前から約8000万年前まで地球磁場の逆転が起こっておらず,これだけ長期間,磁場の逆転が起こらないことは珍しいことです。近年,経済活動に起因する地球のエキセントリックな温暖化で海水準が上がり,すでに地球磁場の変動が起こっていていつ逆転してもおかしくない状況下にあります。磁場の変動は,気候変動,海水準と関係があるといえるでしょう。なぜ海水準かというと氷が解けて海水が増えると遠心力で赤道付近に集中し地球の自転速度が遅くなります。そうすると地球のコアに影響が及び磁場が不安定になるということです。地球磁場は,紫外線やX線などの有害な放射線を遮る役割をしていますので,生命にとってなくてはならないものです。本来ならば地球は寒冷化に向かっているはずですが,人の手で自然界を撹乱して海面上昇をもたらし大切な地球磁場を不安定にし,逆転の時期を早めようとしています。地球の温暖化や異常気象は,温暖化効果ガスの排出の問題よりも,経済活動による大気汚染,つまり工場や航空機,自動車などの排煙や熱帯雨林などにおける大規模伐採・焼畑などに起因する大気循環の異常のほうが大きな根本原因になっています(こちらのpdf参照)。大気汚染で太陽光が遮られると気温が下がり,地表や海面から気化熱を奪い蒸発・上昇気流・雲・風の発生が妨げられますが,これが世界規模になるとどうなるでしょうか。例えば,北極圏の氷が融ける一方で他の地域が厳冬になったり,初春の雪,長梅雨,集中豪雨,猛暑,巨大台風など色々ニュースで見たり経験しました。経済活動の活発化による大気汚染のほか,世界で森林を大規模伐採して焼畑,宅地・道路開発,メガソーラー発電誘致など,自然破壊をすると自然界のバランスが崩れて対流圏に乱れが生じ,地球規模で大気循環の異常など連鎖的に様々な事象が起こるのです。