秋はスズメバチの活動の終盤の時期です。下関市では9月の末にアケビの実が熟しはじめ,10月上旬,開いた実の中に入り込んでスズメバチが蜜を吸っていました。近付いてしばらくするとカチ・カチ・カチと威嚇音を立て始めました。
今回は,コガタスズメバチがなぜ音を発したのか,その原因などについて写真と動画で紹介したいと思います。
ミツバアケビの実を食べるコガタスズメバチのメス(10/01) |
コガタスズメバチ(小形雀蜂)
学名は,Vespa analis insularis Dalla Torre, 1894(ヴェスパ・アナリス)で,1894年にオーストリアの分類学・昆虫学・植物学者であったダッラ・トッレ(Karl Wilhelm von Dalla Torre)によって記載された蜂です。
英名では,yellow-vented hornetと呼ばれ,「黄色い腹部をもつスズメバチ」という意味になります。
上の写真を接写している時に,近くにいた仲間のスズメバチが音を発しましたが,この被写体のスズメバチがアケビに夢中で気が付かなかったためか,仲間が音を立て始めて30秒ほどして被写体のスズメバチに危険を知らせるために飛びついてきて,2匹とも逃げていきました。
この2匹のスズメバチは働き蜂(メス)で,毒針をもっていたと思いますが,攻撃をしてきませんでした。メスだけが産卵管を兼ねた毒針をもっています。つまりこの場合の威嚇音は人に警告をしているのではなく,仲間同士のコミュニケーションの手段だったということがわかります。
動画に収めていますのでご視聴ください。
もし巣が近くにあって,ほかにもメスの働き蜂がたくさんいれば音に敏感に反応して集団で攻撃してきた可能性は高いと思います。
夏場は,働き蜂が小型の昆虫を捕らえて巣まで運んでいるようです。獲物に食いついている最中は,スズメバチに近付いても下手なことをしない限り攻撃されることは滅多にないので,撮影は容易です。そうはいっても常に恐怖心と警戒心はもつべきです。つまり,野生動物は人間のようにエネルギーを消耗するような理に適わない行動を起こすことはほとんどないですので,攻撃されてもその原因や過失はほぼ人のほうにあるといっても良いと思いますので,自然には畏敬の念をもって接するよう心がけたいといったところですね。
コガネムシを捕らえて運んでいるコガタスズメバチ(8/13) |
コガネムシの仲間を十分に弱らせた上で,重そうによたよたとよろけながらも飛んで巣へと運んでいきました。
コガタスズメバチの巣 |
巣は,スズメバチと呼ばれる理由となっているスズメの茶~黒褐色の翼,赤褐色の頭頂部,薄汚れたクリーム色の腹,白色の頬(ほお)や後頸部(首の後ろ)を思わせるような色や模様をしています。
コガタスズメバチの巣の表面 |
どうしてこのようなきれいな模様になるのか,意図的なのかはわかりませんが,色調は巣材の違いを反映しているのでしょう。
春頃になると越冬をしたメスの女王蜂によってトックリ型の巣がつくられはじめます。家の軒下や庭木の茂みなどに巣を作られることもありますので早めに対処できるよう気をつけておきましょう。巣の発見は軒下や屋根裏の場合が多いですが,庭木の定期的な剪定作業は,景観を保持し体裁を整えるといった目的以外に,そういった理由もあることも忘れないでおきたいですね。
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