10月上旬,6月上旬に植えられたサツマイモ(スイートポテト)の葉が網の目のように虫食まれ,折りたたまれた葉の内側に体長8㎜ほどの小さい蛾の幼虫が観察されました。イモキバガといいますが,またの名をイモコガ(芋小蛾)と呼ぶそうです。今回は,イモキバガについて写真をまじえて解説します。
サツマイモの葉を食べ尽くす寸前のイモキバガの幼虫(10月上旬) |
イモキバガ(芋牙蛾)
イモキバガは,チョウ目キバガ科フサキバガ亜科ヘルシストグラマ属の蛾で,
学名は,Helcystogramma triannulella (Herrich-Schaffer, 1854),
英名は,sweetpotato leaf folder(直訳:甘藷の葉を折りたたむもの)。
イモキバガの頭部には触角とは別に,次の写真のように例えば象の牙のような形をした付属器官が1対みられます。
仰向けにして撮影したイモキバガの成虫 |
イモキバガの食草となるサツマイモ(ヒルガオ科,別名:甘藷,山口県では唐芋,略して「といも」と呼ばれることがあります)。サツマイモは5月末から6月中旬にかけて葉のついたツルが畑に植え付けられます。
イモキバガの成虫の体長は1㎝ほどになり,7月から10月にかけて発生します。
食べ尽くしたサツマイモの葉にとまるイモキバガの成虫(10月上旬) |
イモキバガの成虫 |
次の写真は体長1㎝ほどのイモキバガの老齢幼虫です。
イモキバガ幼虫の背面(10月上旬) |
イモキバガ幼虫の側面(10月上旬) |
イモキバガの棲みかはどうやってつくられた?
イモキバガ幼虫は,折り畳まれたサツマイモの葉を剥ぎ取って開けてみると中からフンや糸柱とともに見つかります。どうやって大きな葉を折り畳んでいるのか推測ですが,恐らく幼虫が吐き出した糸が乾燥して縮む性質を利用して,葉を折り畳んでくっ付けているのではないかと思われます。
キバガの仲間は地球上にいつ頃からいた?
キバガ科の蛾は,東南アジアのミャンマー北部,カチン州に分布する約1億年前の前期白亜紀のAlbian期の地層から最古の化石が見つかっています。この化石はカチン州のフカウン渓谷から出るビルマ琥珀(バーマイト)に含まれています。このほかバーマイトと呼ばれるものには9900万年前の後期白亜紀Cenomanian期になりますが,古代鳥の趾(あし)や世界最古の古代カエル,トカゲ,クモ,多種にわたる昆虫の化石など様々な生物が発見されています。
山口県の地層でいうと,Albian期は関門層群の上半部を構成する火山岩優勢の下関亜層群の堆積した時代になり,赤鉄鉱(酸化鉄)を含んだ赤褐色の赤色泥岩やその中に泥質石灰岩(蒸発岩?)が堆積していることなどから熱帯から亜熱帯性の気候条件で乾燥した時代であったと考えられています。下関亜層群の赤色泥岩は赤間硯の原石として知られています。
最近,下関市の下関亜層群からは恐竜の卵殻の化石が記載されました。
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