9月の下旬,植木の剪定の際に美しい青色の毛状突起をもつ大型のイモムシが5匹ほど鈴なりについていました。とても珍しいイモムシでしたので,その後,経過観察を試みました。今回は,シンジュサンの繭化から羽化までの様子について写真で紹介したいと思います。
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食樹のモクセイの木につくシンジュサンの幼虫(9月中旬) |
シンジュサン(神樹蚕)
シンジュサンは,チョウ目ヤママユガ科の蛾の1種で,
学名はSamia cynthia pryeri(サミア・スィンティア)。
英名はAilanthus silkmoth(直訳:ニワウルシ・カイコガ)。
分布は日本では九州・四国の暖地に普通で,これ以外の地域では珍しいようです。
シンジュサンのマユは絹織物の原材料になるため日本にも導入されました。Ailanthus(エィリアンタス)はニワウルシ属のことで,欧米ではウルシに似ていてかぶれない木として庭に植えられることから「神の木」などと呼ばれ,これが中国原産Ailanthus altissimaの和名「シンジュ」の由来となっています。
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繭になる直前のシンジュサンの幼虫(9月下旬) |
シンジュサンの幼虫は,繭をつくる前に体内の水分を排出しますので水のような透明な液体を出します。
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マユをつくり始めたシンジュサンの幼虫(9月下旬) |
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マユ化の最中のシンジュサンの幼虫,2時間後(9月下旬) |
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シンジュサンのマユ化,3時間後(9月下旬) |
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マユをつくり始めた日の翌朝のシンジュサンの繭(9月下旬) |
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羽化直後のシンジュサンの成虫(翌年,6月中旬) |
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シンジュサンの成虫,約6時間後(6月中旬) |
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枯れ葉に産み付けられたシンジュサンの卵(6月下旬) |
4頭ほど羽化しましたが,その後外へ解放しました。
日本に養蚕が最初に伝わった場所
養蚕渡来の地は,山口県の下関市長府にある忌宮神社とされています。境内には『養蚕渡来之地』と書かれた石碑が建てられています。2世紀末の弥生時代に畿内に倭国が成立して間もない頃の仲哀天皇2年6月(193年)に穴門の豊浦津へ移り豊浦宮(忌宮神社)が創建され,仲哀天皇4年に秦の始皇十一代の子孫の功満王が来朝して帰化し,仲哀天皇(足仲彦:たらしなかつひこ)が滞在されていた豊浦宮において蚕の卵が献上されたということが平安時代に編纂された歴史書である『日本三代実録』に記されているということです。
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