ハゼノキは,同じ属のウルシと同様に触ったり降雨の後に近くを通ったりすると顔などがかぶれるという方もいらっしゃいます。今回は,秋~冬にきれいな色に紅葉するハゼノキについて写真を用いて解説してみたいと思います。
樹高約10mのハゼノキの高木の枝を下から見上げて撮影(10月末) |
ハゼノキ(櫨の木)
ハゼノキ(Toxicodendron succedaneum (L.) Kuntze, 1891)は,英名でJapanese wax tree。学名のトキシコデンドロンの「Toxico」はラテン語で「毒のある」という形容詞の略形,「dendron」はギリシャ語で「木」を意味しますので,「毒のある木」という意味になります。実際,細胞毒性のあるヒノキフラボンやアレルギー物質を含有しており,害虫や害獣から植物体を守る手段だと考えられます。種名の「succedaneum」 は,ラテン語の形容詞で「別の物を代用した」という意味で,古代から西洋で利用されていた蜜蝋や鯨油・魚油などの動物性脂肪などの蝋燭(ろうそく)の原料の代用品という意味だと考えられます。「wax tree」というだけでハゼノキを指します。英語で「木蝋」(もくろう)は「Japan wax」といいますが,ハゼノキはJapan wax treeとはいいませんから,英名は日本のハゼノキという意味になります。ちなみに室町時代から木蝋で製造されている「和蝋燭」は英語で「Japanese candle」といいます。ハゼノキの原産地は東南アジア,インド,中国などで,中国南部からもたらされたといわれています。リュウキュウハゼともいわれ,本土に生育しているものは植栽されていたものが野生化したようです。
ウルシ科ウルシ属の落葉広葉樹で,ハゼノキに含まれるウルシオールによるアレルギーはウルシほど強くありませんが,葉などが顔や首筋など肌の弱い部分に触れたりするとかぶれて,かゆみなどのアレルギー症状を引き起こすことがあります。首筋がかぶれたことがありますが,かゆみはなかなか治まりません。
まだ紅葉していない頃のハゼノキ(12月上旬) |
ハゼノキは,1枚の葉の先端に1枚の小葉をつけており,奇数羽状複葉の葉と呼ばれます。小葉は対生~亜対生で4~8対生じます。
ハゼノキの奇数羽状複葉の葉(12月上旬) |
ヤマハゼ(山黄櫨,Toxicodendron sylvestre)の葉に似ていますが,葉軸に毛が生えている点などで識別できます。
ハゼノキの縦に浅い割れ目の入った樹皮(10月末) |
2020年は12月上旬にハゼノキの紅葉が始まり,12月下旬には雨で葉が落ち始めたところです。
赤く紅葉したハゼノキの葉(12月中旬) |
次の写真のように,葉が落ちる寸前の12月下旬に最も美しい紅葉が見られました。
赤くさらに美しく紅葉したハゼノキの葉(12月下旬) |
ウルシ属(Toxicodendron)の化石はいつ頃からみつかっている?
ウルシ属の化石は,アメリカやチェコ共和国において今から3390万~2810万年前の前期漸新世の地層から最古級のものが見つかっています。アメリカ,オレゴン州のJohn Day層からToxicodendron wolfei,チェコ共和国,クンラティツェのチェスキー・スツツェドホジー火山コンプレックスからToxicodendron herthaeが報告されています。
ウルシ属の日本からの化石記載はありませんが,形態の類似したウルシ科ヌルデ属で最も古いRhus palaeojavanicaが長崎県大島町に分布する後期始新世前期の松島層群崎戸層から記載されています。
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