2021/07/11

山口県でカベチョロと呼ばれる爬虫類のニホンカナヘビ;交尾,卵,孵化の観察 / カナヘビ科:道原層の時代に出現!?

 

下関市ではブロック塀を縦横無尽に歩き回るカナヘビのことを子供の頃に“かべちょろ”と呼んでいたという方もいらっしゃると思います。逆に福岡では都市部に多いヤモリに対してそう呼ぶとのことです。ヤモリは田舎ではあまりメジャーな動物ではありませんので,どちらかの県が類似性の範疇でそう呼称するようになったのでしょう。今回は,ニホンカナヘビについて,交尾や卵,孵化の様子を写真に収めたので紹介したいと思います。

写真_動物
孵化して間もないニホンカナヘビ(7月中旬)


ニホンカナヘビ(日本金蛇)

ニホンカナヘビは,学名でTakydromus tachydromoides (Schlegel, 1838)

英名は,Japanese grass lizard。

カナヘビ属は東アジアに24種が知られています。属名のTakydromusは,ギリシャ語に起源がありますが英語に名残があり「Tachy-」(素早く)と「dromus」(走る)という意味で,すばしっこいところから由来した名前であることがわかります。種名の「-oides」は,「-のような」という意味のギリシャ語になります。


写真_動物
ニホンカナヘビ(7月中旬)


ニホンカナヘビは,同じ有鱗目に属するニホントカゲと比べても胴体よりも尾がヘビのようにかなり長いといった特徴があります。舌もヘビのように二又に割れています。

次の写真のように恐竜を想わせる顔をしていて,耳が大きく発達し,鱗には稜線(キール)が見られ,先端がとがっています。

写真_動物
ニホンカナヘビの側頭部


ニホンカナヘビの交尾はオスがメスの腹部に噛み付いた姿勢で行われます。

写真_動物
ニホンカナヘビの交尾(4月下旬)


5月中旬に,山で6個ほどの卵が地面に産み落とされているのを見つけました。サイズは,長径5㎜ほどになります。

写真_動物
ニホンカナヘビの卵(5月中旬)


孵化直前の卵のサイズは長径8㎜ほどで恐竜のような殻はなく,伸縮性があり孵化したあとは5㎜ほどにもどります。

孵化前のニホンカナヘビの卵(7月中旬)


ニホンカナヘビが手の平の上で孵化した時の写真ですが,幼体の体長は6㎝ほどでした。卵に満たされていた水分があふれ出てきて頭部から元気よく出てきました。

写真_動物の孵化
ニホンカナヘビの孵化(7月中旬)

卵から幼体が孵化するまでは約2ヶ月といわれていますので,ちょうど産卵したての卵を見つけたということがわかります。


写真_動物
孵化直後のニホンカナヘビ(7月中旬)


カナヘビの仲間はいつ頃からいた?

カナヘビ科は,世界に39属300種の現生種が知られていますが,化石として最古級のものは,スペイン北東部にあるアラゴン州,テルエルに分布する今から約1億3000万年前の前期白亜紀の後期Hauterivian期のEl Castellar層(浅い湖沼の堆積物)からLacertidae indet.として報告されています。アラゴン州は炭酸塩鉱物のアラゴナイト(霰石)の鉱物名の由来となった地域で,粘土中に三連双晶をなす六角柱状のアラゴナイトが産出します。エル・カステラー層のあるアラゴン州は,カステラの発祥の地(カスティーリャ地方)ではないですが,カステラの語源と同じく「Castella」はラテン語で城の多い地方を意味します。テルエルのエル・カステラーは,前期白亜紀の恐竜の産地として知られテーマパークもあります。

山口県でいうと,年代的には前期白亜紀の後期Hauterivian期の関門層群脇野亜層群道原層の時代になります。脇野亜層群の模式地において,ちょうど同時期の千石層からは恐竜(ワキノサトウリュウ)の歯牙の化石も産出しています。道原層は山口県ではあまり知られていませんが,下関市の関門海峡沿いに狭小に分布しています。下関市の豊西層群吉母層の上部層が前期Hauterivian期が上限年代とされ,吉母層と道原層は不整合関係にあり道原層はBarremian期で後期Hauterivian期の一部を含むとする見解があります。Hauterivian期は,海洋プレートの海溝とほぼ平行方向の高速移動に起因した構造線における横ずれ断層運動により日本における付加体群の再配列が大規模に起こった変動期で,周防変成帯などでの褶曲帯の形成による周防変成岩(低温高圧型)の隆起・削剥・露出もこの時代に起こっており,この地殻変動により豊西・関門両層群の層序間隙が生じたものと考えられます。しかし,Brotiopsis(巻貝)や石灰岩ノジュールを含む岩相が脇野亜層群に限定されることが判明してからもなお,両層群が従来と変わらず同時異相とされたり,豊西層群を関門層群に含めるとする文献もあります。

2014年に吉母層とこの下位の清末層とから125 Maという同じ年代中間値をもつ砕屑性ジルコンのU-Pb年代が測定され、この年代を引用した論文などを見られて道原層の年代を120 MaのAptian期くらいに見積もられている方もいらっしゃると思いますが、論文の吉母層と清末層の年代値の生データを図式化すると明らかに年代の若返りを示す年代特性を示しています。つまり閉鎖温度が高いこととコンコーディア法を採用しているとはいえそれだけで信頼できる年代=地層の年代を示しているとはいえないのです。これは他の研究をなおざりにするとともに年代データ利用者のU-Pb年代への過信が招いた弊害といえるでしょう。































































































































































































































































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