2015/03/19

山口県下関市のジュラ紀の弧間構造盆の内海相堆積物,豊浦層群の概要(Geology of the Jurassic Toyora Group in Yamaguchi, Japan)


山口県西部の下関市の南部に分布するジュラ紀の弧間構造盆堆積物の豊浦層群と,本層群に属する堆積岩類からなる4つの層単元の地層についての概要を以下に説明します。


豊浦層群(とよらそうぐん) Toyora Group


矢部(1920)により豊浦層と命名され,Matsumoto(1949)より現称。山口県西部の下関市(旧,豊浦郡)に分布する下部~上部ジュラ系で,田部盆地によって本層群模式地のある北部地区と南部地区に隔てられる。


古生代の蓮華変成岩を傾斜不整合に覆い,ジュラ紀末期~白亜紀前期の豊西層群に軽微な傾斜不整合を伴い平行不整合に覆われる。下位から東長野層西中山層歌野層,および阿内層の4層に区分される。

全層厚約1000~2000m。主として剥離性~塊状の黒色泥岩・砂質泥岩,砂岩,礫岩などからなり,本層群4層の各層に生痕属Phycosiphonによる生物擾乱を受けた泥岩を挟在する。
長門構造帯に沿って伸長し,豊浦盆地と呼ばれる内海盆地(epicontinental marine basin:Tanabe, 1991)に堆積した地層であるが,南部地区の東長野層が北部より早期に海域の侵入を受けて堆積が開始していることなどから,西方の外海につながる堆積盆地であったようである。豊浦層群の堆積末期には、ジュラ紀変動による地殻変動,とくに北部九州地域の隆起によって内海の堆積盆地は開放型湖沼に変化し,淡水化が起こる。


・東長野層

東長野層(ひがしながのそう)は,長門構造帯起源の崖錘スロープエプロンからなる基底礫岩~砂岩,砂質泥岩からなる。多種多様の二枚貝・巻貝化石を多産し,Arietites,Amaltheusなどの示準性のあるアンモナイト,六放サンゴのChomatoserisや枝状サンゴ,漂流生活を営むウミユリのPentacrinitesなどを産する。層厚は,北部で250~300m,南部で750~770m。地質年代は前期Sinemurian期~後期Pliensbachian期。南部ではHettangian期を含むとされる。


・西中山層

西中山層(にしなかやまそう)は,タービダイト性の砂岩層を時に挟むよく成層した泥岩優勢層からなり,アンモナイト(ダクチリオセラス科,ヒルドセラス科,リトセラス科,フィロセラス科)や二枚貝化石,領石型の植物化石,ワニ・カメ類などの脊椎動物化石,昆虫化石などを産する。
下位から化石帯としてのCanavaria japonica帯(後期プリンスバッキアン期後半),Paltarpites paltus帯(前期トアルシアン期初期),Dactylioceras helianthoides帯,Harpoceras inouyei帯(前期トアルシアン期後半~中期Toarcian期)に再区分が行われている。層厚は北部で225~250m,南部で550~580m。後期Pliensbachian~中期Toarcian期。北部地域では浅い環境が推定されているが,南部地域で内海の堆積盆底の堆積環境を示す。

・歌野層

歌野層(うたのそう)は,砂質泥岩,泥岩,砂岩,酸性凝灰岩からなり,デルタ外縁のタービダイトローブを形成するタービダイト砂岩層が頻繁に挟在。後期Toarcian期のGrammocerasPseudoliocerasPhymatoceras,Aalenian期のPlanammatoceras,Bathonia期のNannolytocerasなどのアンモナイト,ベレムナイト,BositraRetroceramus utanoensisなどの二枚貝化石、放散虫を産する。層厚は北部で120~300m以上,南部で150~480m。地質年代は、中期Toarcian期~Bathonian期末。南部では海退期の基底礫岩を伴い,Aalenian期~Bathonian期末。

阿内層

阿内層(おうちそう)は,礫岩~含礫泥岩に始まり,泥岩,砂質泥岩,砂岩,礫岩,酸性凝灰岩からなる。阿内層下部は内海の海成層で流向データから長門構造帯側に形成されたファンデルタから砕屑物の供給を受けたことが判明しており,南部ほど粗粒物質の影響が強い。阿内層上部ではジュラ紀変動に伴う約1000万年間にわたる付加体群の基盤の上昇により北部九州を中心とした地域が隆起し,内海に流れ込んだ地表水は傾動盆地に溜まり、開放的な湖沼環境となって汽水~淡水化した時期があったと考えられる。Callovian期以降,とくにOxfordian期の温暖化による第2オーダーの海進がTithonian期の豊西層群基底の堆積直前(150Ma)まで続き、ジュラ紀変動を代表するナップ構造形成に伴う地殻の隆起による顕著な削剥を免れたと考えられる。阿内植物群(旧,歌野植物群)と称される主にZamites variusZ. nipponicusPtilophyllum cf. cutchense,Nilssonia ex gr. schaumburgensisBrachyphyllum toyoraensisといった後期ジュラ紀の領石型植物群の要素を豊富に産出し,Dictyozamites・Ginkgoitesなど石徹白型植物群の要素を含む混合型植物群を構成する。なお、CzekanowskiaはOishi(1940)による形質記載に懐疑的な部分があるため除外。Callovian期の間は北方系のDictyozamites naitoiなどが産する。南部に広く分布し,層厚は300~570m。地質年代は、Bathonian期末~前期Kimmeridgian期。
阿内層の上位は,豊西層群清末層(Tithonian期~Berriasian期)が平行不整合に覆っている。






















































































































































































































































































































































































































































































































































































































































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