海岸の岸壁や河口付近の川によく現れるイソシギですが,写真で見ると大きな鳥のように見えますが意外と小さな鳥で,ハクセキレイよりもひと回り大きめのツグミほどの体格です。今回は,シギの仲間の中でも最も一般的なイソシギについて解説したいと思います。
海側や上から見ると保護色の磯の汀線を歩くイソシギ(2月上旬) |
イソシギ(磯鷸)
イソシギは,学名がActitis hypoleucos(アクタイティス・ハイポリューコス)で,英名は「Common sandpiper」で一般的なシギを意味するのですが,英語で「 sandpiper(サンドパイパー)」というだけでシギ一般というよりもイソシギを指す場合が多いということです。
「Actitis」は,古代ギリシャ語で「海岸(akte)の居住者」を意味しますが,そのとおりで海岸で羽を休めているところをよく見かけますが,このほか河口付近の干潮時の川や田んぼの用水路など様々な場所で採餌している姿が見られます。種名の「hypoleucos」は,古代ギリシャ語で「下部の(hypo-)白い(leuco)」を意味します。確かに腹部がきれいな真っ白をしています。
イソシギの特徴
イソシギにおいて,翼は緑褐色を帯びた灰色をしていて腹部が白色,胸部側面は灰色がかっているため,翼を閉じた状態では,おなかの白色が肩の部分まで湾入しているように見えるのが際立った特徴といえます。
クサシギにも,体格や色調などかなり似ていますが,イソシギには翼の1つ1つの羽に同心円状の模様が入っていることで区別できます。
頭部の特徴などは,白色の眉斑(びはん),眼窩線(がんかせん),嘴(くちばし)の形状などにおいてクサシギやキアシシギなどにも類似しています。
クサシギに似た部分の多いイソシギ(10月中旬) |
イソシギの足は緑がかった黄色ですが,上の写真のように灰色がかって見えることもあります。翼を広げると翼の前縁の一部のほか,後縁に沿って灰褐色を基調とする風切羽の中に白色の模様が入り,白色の帯状に見えます。
イソシギが飛んでいる姿で背面の色が水面の色によく溶け込む(5月下旬)。 |
上半分の体色が緑がかってみえる点も,緑色の藻類が生えた磯に溶け込んだ保護色となっていて,磯がつく名前としてふさわしいと思えます。翼上面の白い帯状模様は,白い波しぶきや,水面への光の反射に扮しているのかもしれません。
イソシギの冬の水浴び
2月下旬,イソシギが,同じ場所に立って,何回も暴れるような様子で水浴びをしていました。
冬に川のほとりで水浴びをするイソシギ(2月下旬) |
波紋が際立っていますが,痒かったのかよほど我慢していたのかもしれません。水浴びが終わった後,首を伸ばし長いくちばしで届きにくい胸元を繕っていました。
川で羽繕いをするイソシギ |
2月下旬(20日~)に入り,気温が10℃を上回る日が多くなったこともあるのか,それまで長い間たまっていた汚れをきれいに取り除きたかったのでしょう。ヒトでも肌が乾燥して気温が寒い時期から暖かくなる過渡期の頃に肌がかゆくなりがちです。羽づくろいをした後は獲物を探す様子もなく,川の中洲をかなりの勢いで小走りで走り回っていました。飛べばもっと早く乾くと思いますが,とにかく寒いので飛び立つ前のウォーミングアップをしていたのかもしれません。
イソシギの採餌
イソシギは,ほかのシギと同様に獲物を探るときは目を閉じるか細める習性があるようです。カニや昆虫などを主に獲って食べているようです。そのとき尾羽を上下させながら獲物を探し歩いたり捕獲っているのがわかります。
川底で採餌をしているイソシギ(8月下旬) |
イソシギとクサシギ
イソシギとクサシギは交配が可能なほどに密接な関係があるといわれていますので,これはイソシギなのかクサシギなのかと考えてしまうような個体も中にはいます。
次の写真のように,一緒にいるところも目撃します。
イソシギ(奥)とクサシギ(11月上旬) |
イソシギは,九州以北では留鳥とされますが,夏に入って暑くなると見かけなくなります。この時期は,繁殖のために,草原などで昆虫を獲りながら子育てをしているのかもしれません。
0 件のコメント:
コメントを投稿