オナガガモは北海道やロシア極東から西日本へ渡って来て越冬生活をしますが,下関市では秋から春にかけて海岸の浅瀬に群れで一斉に頭を海中につけ長い尾羽を立てて採餌をしているのが観察されます。今回は,オナガガモの生態や習性,求愛行動などについて解説してみたいと思います。
オナガガモが群れで飛んでいるところ(3/10) |
オナガガモ(尾長鴨)
降雨の中,羽繕いをするオナガガモのペア(3/10) |
オナガガモの学名は,Anas acuta(アナス・アキュータ)。「Anas」はラテン語で,鴨(かも)を意味します「acuta」はラテン語の女性形の形容詞で,英文の記載用語でよく使われる「acute:先のとがった」と同じ意味です。何がとがっているのかというと,英語名の「Northern Pintail」からもわかるように,尾(tail)の先が,針(ピン:pin)のようにピーンと尖っています。英語でpintailというだけでオナガガモを指しますので,それだけ際立った特徴だということです。
オナガガモは,北海道から北の地域で繁殖しますが,11月の初めには,マガモとほぼ同時期に越冬のために北方から渡ってきます。渡ってきてからは,干潮で砂地が見えるほど浅くなった浅瀬で,よく採餌しているのをみかけます。
波打ち際で採餌するオナガガモと,カルガモ(左の7羽)の群れ(1/27) |
オナガガモの特徴
オナガガモは,マガモやヒドリガモよりもひと回り大きい鴨で,首のところがすっきりしていて,オスは尾羽が長く,首のところに白い筋があり,後ろから見ると2本立っているので,識別が容易です。
クチバシの色は,一番最初の写真をみるとわかりますが,オスでは中央が黒色でその左右が青灰色に着色し,メスでは黒一色です。
オスが,メスと似た姿に変化したエクリプスは,ヒドリガモでは,西日本の越冬地でよく観察され,次第にオスらしい羽に生え換わってきます。
西日本ではオナガガモのエクリプスは見たことがありませんが,関東のほうでは観察されるようです。
ですので,
北海道やロシア極東地域でメスが営巣することで,子育てに関与しないオスは次第にエクリプスに戻り,秋になると渡りを始め関東あたりを経由して日本列島を縦断しながら,羽がオスらしく生え換わり,ツガイを形成しつつ最終の越冬地に渡ってくるということが想像できます。
オナガガモは,暑いのが苦手だからなのかどうか確証はありませんが,越冬地への渡ってくるのがヒドリガモよりも少し遅く,北の繁殖地への帰還が比較的早いですので,オスの羽の生え換わる時期が少し早めということなのかもしれません。
オナガガモのオス2羽(1/27) |
オナガガモのメスは,尾羽がオスのようにあまり長くないですが,体色は,黒褐色(こげ茶色)を基調に,羽が白色に縁どられた模様をしていて,頭の部分が茶色一色ですので,類似しているマガモのメスと区別が容易です。
オナガガモのメス(1/27) |
オナガガモの習性
群れのほとんどの個体が,頭部を海中につけたままの姿勢でいるのが,よく観察されます。
海岸の浅瀬で採餌するオナガガモの群れ(1/27) |
河口の淡水が流れる浅瀬で採餌するオナガガモの群れ(3/11) |
流れの方向に逆らって,上流から流れてくる水草やプランクトンなどをこしとって採餌する光景は他のカモでもよく見ます。一斉に顔を水に浸けたり上げたり,同じ方向を向くという仕草は,群れで暮らす鳥の習性のようです。
この地域に定着した留鳥のカルガモも一緒に集まって,頭を浸けて採餌していました。カルガモは海でも,海藻やプランクトンのほか,エビや貝類,小魚などの小動物をとって食べているのでしょう。
海岸の浅瀬に採餌を一斉にやめたオナガガモとカルガモの群れ(1/27) |
カルガモも,「郷(この場合は群れ)に入(い)れば郷に従え」ということで,同調しているのでしょうか。
オナガガモの求愛
オナガモの求愛行動(3/24) |
上の写真では,他のオナガガモが羽を休めて団子のようになっているなか,上の写真の2羽のみが,求愛ディスプレーをしていました。
オスのほうが頭部を上に反らし,ピュー,ピューと鳴き,メスも同じような姿勢をとっています。おそらく,ペアになれずに取り残された若い個体か,片方を失った個体どうしなのではないかと思われます。4月には北の繁殖地へ旅立つことでしょう。
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