2019/09/03

キアシシギとその生活,鳴き声,求愛行動,体の特徴など(Mating displays of Grey-tailed Tattlers watched in summer tidelands of southwest Japan)


8月下旬,秋雨前線が南下して,少し涼しくなってきたころ,干潮の時間帯に河口付近の川底は流路を残して干上がるのですが,暑い時分は閑散としていた川に野鳥たちが戻ってきました。いつでも会えるカルガモやカワウもほぼ同じ頃に川に戻ってきて,その近くにシギの仲間のキアシシギの群れが観察されました。

今回は,キアシシギについて写真や動画で紹介したいと思います。





キアシシギ(黄足鴫)


キアシシギの名の由来

キアシシギは,学名で,Tringa brevipes(トリンガ・ブレビペス),英名でGrey-tailed Tattler(直訳で灰色の尾羽をもつおしゃべり[告げ口]屋)です。早口でよく鳴くからでしょう。tattleの訳(ぺちゃくちゃしゃべる)もキアシシギを思い浮かべると覚えやすいですね。Tattlerのみでもキアシシギを意味します。

Tringaという属名は,アリストテレスのいう古代ギリシャの鳥 trungus に由来します。trungusは,ツグミほどの大きさで,お尻が白いといった特徴があり,1599年にイタリアの博物学者のアルドロヴァンディによって,クサシギにこの名を当てられたということです。

brevipesという種名は,複合語をつくるラテン語「brevi-」と,男性名詞「pes」からなる語で,「短い(brevi)足(pes)」を意味します。キアシシギは,他のシギの仲間よりも足が短いです。

キアシシギの和名は,名前のとおり足の色が黄色をしていることからだとわかります。

 

干潮時の河床に出現した中洲に,黄色い足をもつシギが仲良く2羽,キアシシギのつがい?

 

西日本におけるキアシシギの動向と特徴

5月上旬キアシシギの4羽ほどの個体が,川に飛来しました。

 

干潮で現れた河床に飛来したキアシシギの群れ(5/6)

 

キアシシギは,北方の大陸のシベリアなどで繁殖するといわれていますが,5月には,すでに求愛行動を始めるようです。ヒト目線で観察すると,じゃれ合っったり,けんかをしているように見えますが,次の写真はその証拠写真です。

 

キアシシギの求愛給餌(5/13)

 

求愛給餌といって,鳥はオスがメスに獲物をプレゼントするといった行動をよくします。左側がメスのように思えますが,ディスプレー飛翔をするのはオスのほうですので,右側がメスで獲物を受け取っていると考えられます。

ディスプレー飛翔がどのようなものかというと,次の写真のようになります。

 

キアシシギのディスプレー飛翔(5/13)


次の写真のように,メスを伴った飛翔も見られます。

 

キアシシギのオスのメスを伴う飛翔(5/13)

 

キアシシギは,北海道・本州では旅鳥

キアシシギは,6月上旬を過ぎるとどういうわけか,川から忽然と姿を消し見られなくなります。恐らく,梅雨の長雨を避け北の方へ渡りを行っているのでしょうか。そうであれば,6~7月には大陸のどこかで繁殖,子育てをしていると思われます。それから親鳥が若鳥を伴って南へ渡りをするには,ある程度の期間が必要でしょう。

越冬のために,東南アジア,さらに南の南半球にまで渡りをする個体がいるようで,ここ西日本では9月頃までみられます。精神的体力的なものか,負傷が原因なのか,九州などに居残りをするものもいるようで,鳥の社会も色々ですね。

 

キアシシギの北からの帰還と,その鳴き声

7月の終わり頃から8月初め頃には,再び,6~7羽ほどの個体が川で観察されました。その頃には,若い子供が数羽いるためか,ピヒュル・ピヒュル・ピヒューピヒューピヒューピヒュー・・・と,高速・高音でしきりに鳴き合って,コミュニケーションをとっているようです。キアシシギの英名にもあるように,確かにぺちゃくちゃとしゃべくりまくっているように聞こえます。

ピヒューピヒューピヒュー・・・の部分は,3から6回繰り返します。普通の地鳴きは,ピヒューイピヒューイと鳴きます。

繁殖地では4個の卵を産むそうで,2組のつがいが子供をつくっているとすると,生き残って渡ってきたのは2~3羽程度でしょうか。

 

8月下旬,河口付近の川では,キアシシギのほかソリハシシギイソシギ,カイツブリ,カルガモ,カワウ,ハクセキレイなどが観察されました。カワウは,暑い時分もその川で時々見かけていましたが,キアシシギを除く他の鳥についても,6月から8月上旬頃までは,どういうわけか川を離れています。

鳥たちがあまり動きたがらない暑い時期に,繁殖の時期が集中していて,子連れの親鳥を見ることがよくあるので,多くは繁殖・子育てのためでしょう。


キアシシギの採餌

キアシシギは,全長が25㎝程度とツグミやムクドリほどの大きさで,川にいても灰色の保護色で目立たないため,川沿いの道路からでは,観察しようと意識して見ないと,シギがいると気が付かないこともあります。河口付近の川は干潮時に水が引いて,次の写真のようにカニの巣孔がびっしりと姿を現します。

 

カニの巣孔がつくられた河口付近の砂泥からなる河床


このような穴場を狙って,キアシシギが飛来します。

 

キアシシギが川でカニを仕留めたところ(8/25)

 

キアシシギは,カニを捕まえた時は,そのまま口の中に放り込むのではなく,クチバシで何度も振り回してしごいたり,時々放り投げたりして完全に弱らせた後に食べています。カニのツメはもぎ取っているようです。獲物のサイズが大きく喉につかえてしまうのか,お腹の中に入ってもカニのツメで挟まれるなど痛い思いをしたことがあるのかもしれません。

そのような経験からなのか,河床にできた水たまりをクチバシで探るときには,どの個体も共通して目を細めます。

 

キアシシギが目を細めて水たまりを探っているところ(5/13)

 

キアシシギの体の色と模様


 

波状の縞模様のあるキアシシギ(5/13)


キアシシギは,足が黄色く,クチバシは,黒を基調としていますが,付け根あたりは黄色を帯びています。どうしてなのかというと,餌のとり方によると考えられます。というのも,シギは砂地や巣穴などにクチバシを突っ込んで採餌しますので,黄色の組織が削れてしまうというわけです。

お腹まわりは真っ白ですが,胸から脇腹にかけて体の伸長方向に対して直角の方向に波状の縞模様ないしウロコ状の模様が入っているのがわかると思います。それに対して,眉(まゆ),頬(ほお)から首にかけても波状の紋様がみられます。このような波状の紋様は,白色を基調とした個々の羽の外縁が灰色をしていることでつくり出されているように見えます。

 

キアシシギの背中は灰色(5/13)

 

写真を見ると,頭頂部,眼窩線,翼の上面背中および尾羽の上面は灰~灰褐色を呈しています。

メリケンキアシシギに似ていますが,このメリケンキアシシギは,腹部の白い部分が,すべて明瞭な波状紋様で覆われています。

9月頃までは,川や海を行き来しながら群れで飛び回ったり,川岸や防波堤で羽を休めていることでしょう。

最後に動画をご視聴下さい。


キアシシギの動画


 
































































































































































































































































































































 

 
















































































































































 

 

 


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