田起こし前の水田で獲物を探すアマサギ(6/16) |
アマサギ(猩々鷺)
アマサギ(Bubulcus ibis)は,足(後肢)が黒褐色で,クチバシが黄色です。
アマサギの足(6/29) |
アマサギは,体色がコサギやチュウサギ,ダイサギなどの他のシラサギと少し変わっていて,夏羽では飴色で褐色がかっているのが特徴ですが,冬羽は真っ白になります。冬羽では,チュウサギもクチバシが黄色ですので,一見,見慣れないとチュウサギと混乱してしまいますが,アマサギは体長が少し小さめです。夏場は,飴色の体色と,コサギもチュウサギもクチバシが黒色なので区別しやすいです。本州や北九州には夏鳥として南方から飛来し,絶滅危惧種に指定されている県もあります。アマサギの幼鳥は,下の写真のように少し飴色がまだ少なめです。
アマサギの親鳥と幼鳥(7/15) |
アマサギの系統関係
このように混乱してしまいそうな特徴をもつアマサギですが,今回,他のどのサギに近縁なのかを明らかにすることを目的として,ミトコンドリアDNAデータを用いて系統解析をしてみました。その結果が以下に示す図のとおりです。いわゆるシラサギの系統を主に示した系統樹 |
アマサギは,コサギとチュウサギの中間的なシラサギだということができます。この3種のシラサギの共通点は,口角の切れ込みが目の真下でとまる,という点があります。
アマサギは,体長がコサギよりもやや小さめで,一見すると識別が困難なほどですが,クチバシがコサギでは常に黒色,アマサギでは常に黄色という点で区別できます。クチバシが黄色という点では,冬羽の時期のチュウサギと共通しています。繁殖期には,アマサギは,目元や足が赤色を帯び,コサギでは目元と足の指が桃色になるという点で類似しています。つまり,アマサギは,コサギとチュウサギの両方と共通する形質をもっているといえます。解析の際に計算された各枝の長さを考慮すると,アマサギはチュウサギと最も近縁であるということがわかりました。
アマサギの出現時期はシラサギの中で最も古い
新生代は,恐竜が絶滅したとされる白亜紀が終焉を迎えた年代(6600万年前)から始まり,暁新世,始新世,漸新世,中新世,鮮新世,更新世,完新世,そして現世へと移り変わっていきます。現生人類が現れたのは,更新世の終わりの頃です。
実は,恐竜は絶滅せずに,獣脚類(じゅうきゃくるい)の中の鳥類のみが生き残っているという見方もあります。つまり,鳥は恐竜と呼ぶこともできます。
トキ科最古の化石が,最新の情報では前期始新世の初頭(約5390万年前:Smith and Ksepka, 2015)とされているので,これをもとに各枝の分岐年代を出すと,前期始新世末(約4860万年前)にコサギやカラシラサギのグループとの共通の祖先からアマサギを基底にもつグループの祖先が分岐し,前期漸新世の半ば(約3100万年前)頃にアマサギと,チュウサギ・ダイサギのグループとに分化したと考えられます。
つまり,シラサギのグループは,前期始新世の末頃に出現し,その後,アマサギの仲間は前期漸新世の半ば頃に出現したという結論が出ました。アマサギの仲間は,シラサギのグループの中で最も早く出現したということです。アマサギは,3亜種に分かれていますが,おそらく中期更新世以降に大きな謎ともいえる地球表層環境システムの大きな変化があり,それまでの2万年または4万年周期よりも長い10万年周期の気候変動が中期更新世以降にはじまってからそれぞれの地域に適応した亜種に分かれたのでしょう。10万年周期への変化という大きな謎は,地球上の生命を守るために神的な力が働いたと考えざるを得ないほどの衝撃的なことです。最近になって生命は偶然の進化の賜物ではなく宇宙の神々がつくられたという事を述べている書籍もありますので,全くの嘘ではないのかもしれません。
前期漸新世といえば,山口県では,山陽側で宇部市の下片倉層や,下関市の幡生層,芦屋層群が堆積した頃です。下関市の芦屋層群からはペンギン様の鳥類の化石が見つかっています。
一風変わっていると思っていましたが,出現時期に関係なく形質変化の観点からいうと日本ではアマサギ属はコサギに次いで原初的なシラサギになります。こうしてみると野鳥観察も面白いです。
0 件のコメント:
コメントを投稿