秋も深まってきた10月中旬,クレマチスの赤紫色の花が咲いていたので写真を撮ろうと外に出た時でした。チッ,チッ,チッ,・・・と虫の鳴き声が秋のすずしい風にのって聞こえてきました。
今回は,葉陰に隠れてなかなか姿を見せないものの声はよく聞こえるコオロギの仲間のカネタタキについて解説してみたいと思います。
クレマチスの鉢植え(2013/10/13) |
カネタタキ(鉦叩)
カネタタキの名前の由来と生態
カネタタキの学名は,Ornebius kanetataki,英名では,本属の一般名ですがScaly cricketと呼ばれています。
和名は,その名のとおり鉦(かね)をたたくような鳴き声にちなんでいるようです。鉦というのは,金属製で“チャンチキ”ともいうそうで,凹んだ側を撞木(しゅもく)というバチで叩いて鳴らす楽器だそうです。
カネタタキは,庭木や街路樹のある場所に生息していて,小さい昆虫や若葉などを食べて生活しているようで,カンキツ類などの木では果皮が被害にあうようです。
カネタタキとの遭遇
クレマチスの花の写真を撮っている時に,その虫がいることに気がつきました。その時に撮ったのが次の写真です。
どこにいるでしょうか。
カネタタキがたたずんでいるクレマチスの花(10/13) |
鳴き声が聞こえることはあっても,いつも茂みに隠れてどこにいるかわからない虫ですので,こんなセッティングで出会えるとは,この時は奇遇でした。
写真を撮っている最中に,同じ花の上にもう1匹,羽のない淡い褐色をした個体が隠れていました。
触角をしきりに動かして,2匹がコミュニケーションをしているようでしたので,メスの個体だということがわかりました。
カネタタキは,体長が約15㎜ほどで,2本の長い尾毛(びもう)をもっています。
オスには,小さい暗褐色の発音できる前翅(ぜんし,まえばね)があり,2枚の褐色の羽が重なっていて,黒褐色の帯を腹に巻いているように見えますが,胸部についています。
カネタタキのオス(10/13) |
クレマチスの花びらの上で,その短い前翅を立て,こすり合わせて,かわいげに鳴いていました。
前翅を立てて鳴いているカネタタキのオス |
付近で,別のオスの鳴き声が時々聞こえてくるので,それに応えて鳴いているようでした。オス同士で競い鳴きをしているようです。片足がないですが,しっかりと求愛行動をしていました。
カネタタキのメスは,体色が全体的に淡褐色をしていて前翅がなく,産卵管をもっています。
カネタタキのメス(10/13) |
カネタタキの系統的な位置
カネタタキは,コオロギの仲間ですが,いわゆるコオロギよりも系統的に古いです。
カネタタキは,ケラの仲間の祖先から派生した現生のケラ(いわゆるオケラ)と近縁の昆虫で,カマドウマのほか,キリギリス,コロギスなどのキリギリスの仲間の祖先の末裔であることが分子系統学上明らかにされています。
コオロギの仲間の最古の化石は,南アフリカの後期トリアス紀のモルテノ層(約2億3000万年前)から発見されており,カネタタキの祖先昆虫の出現は,これより古い可能性があります。
キリギリスの仲間の化石,Archaboilus musicus (ハグラ科)が,中国,北京北西方に分布する中期ジュラ紀の九龍山層(約1億6500万年前)から産出しています。
Archaboilus(アーカボイラス)の翅の比較研究に基づいて復元された鳴き声が,カネタタキの鳴き声と似ているので聞いてみて下さい。
庭だけでなく山でも,カネタタキがまだ鳴いています。探しても姿がなかなか見つかりません。11月が終わる頃には,虫の声がもう聴かれなくなります。
The Japanese people have the culture and habit of admiring chirps of Ensifera such as Homoeogryllus japonicas [鈴虫: “Suzumushi” in Japanese] in the autumn from ancient times (Heian period of about 1000 years ago).
Recently, a pair of scaly Crickets, Ornebius kanetataki (カネタタキ) were shot unexpectedly in the cource of singing in a potted plant in garden Clematis flowers. The species name and Japanese name [鉦叩: “Kanetataki” in Japanese pronunciation] was named after barks like slaps Kane as the name implies. As can be seen in the video, the male is colorful, and can sing by using small dark brown forewings. The dark colored appearance of the forewings is adorable as if he puts on a belt [帯: “obi” in Japanese pronunciation] of Japanese clothes “kimono”, but somehow the female has a pale brown overall and no wings. The genus Ornebius is older than the so-called Crickets, and is derived from ancestors of mole Crickets, Gryllotalpa orientalis (螻蛄), and has near phylogenetic relationships with mole Crickets. It has recently been clarified by molecular phylogeny that the genus Ornebius are to be descendant of the ancestor of the Ensifera, such as Rhaphidophoridae, and if the geologic ages further trace back, Tettigoniidae (Katydids, bush crickets), Gryllacrididae and Prophalangopsidae (formerly Haglidae).
The oldest fossil of Crickets has been known from the Upper Triassic Molteno Formation in South Africa for about 230 million years ago, so the emergence of ancestral insects of the genus Ornebius may be older than the occurrence age. The fossils of Katydids, Archaboilus musicus (the family Prophalangopsidae) occurred from the late Middle Jurassic Jiulongshan Formation distributed in northwest of Beijing (北京), Nei Mongol Autonomous Region, China for about 165 million years ago. The chirp restored based on comparative studies on forewings of Archaboilus resembles it of Ornebius kanetataki, and so please listen(→YouTube).
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