2020/11/08

ブナ科の常緑広葉樹のアラカシ;山口県で庭木としても植栽されるカタギの木とは?


日本でカシといえばアラカシを指すそうで,山口県でも庭木として植栽され,カタギの木とも呼ばれます。アラカシは住宅地付近の森の中ではツブラジイやコナラなどを伴ってよく見られます。今回は,アラカシの形態や名前の由来などについて写真を交えて解説してみたいと思います。





アラカシ(粗樫)


アラカシQuercus glauca:クァーカス・グラウカ)は,ブナ科の常緑広葉樹で,英名でRing-cup Oak,英名は果実(どんぐり)が環状のカップ(殻斗)をつけているところから由来します。「Oak」は,コナラ属(カシワ,ナラ,カシ,クヌギなど)の総称ですが,海外ではナラ(Common oak)のような落葉樹をイメージすることが普通のようで,常緑樹のカシは「live oak」として別扱いされるとのことです。英語の授業では,「oak tree」を昔はカシの木と教えられ,そう訳していたのを思い出します。



写真_樹木
枝の先端につくアラカシの実と殻斗。



では,和名のアラカシ(粗樫)の意味はどこからきているかというと,枝葉が粗く大きくて硬いからだとされています。

国内でカシといわれるものの中では,アラカシは鋸歯がとくに粗く,葉の長さは最大15㎝ほどでアカガシやハナガガシほどにはならないようですが,幅は6㎝にもなりアラカシが最も広いでしょう。常緑樹ですので当然葉は硬く照りがあります。



写真_樹木
硬く鋸歯の粗いアラカシの葉。


Quercusは-usで終わる古典的な木の名前ですので女性名詞,恐らく樫がはしごなどの横木に利用されたことから由来すると思われます。種名の「glauca」というラテン語の女性形容詞は,英語の「glaucous」にその名残があり「白い粉で覆われた」という意味になります。

何が白い粉で覆われているかというと,葉の裏側が次の写真のように粉を吹いたように白くなっています。



写真_樹木
アラカシの葉の裏側。




アラカシの樹皮は,若く細い木や樹高15mくらいの大木でも褐色で次の写真のように縦に筋が入っているものもあれば,ザラザラとして筋の見えない個体もあります。樹皮は写真の撮り方によっても色や表情も変わってきて,暗いところでフラッシュをたくと白っぽく見え,湿っていると濃い褐色になります。


写真_樹木
アラカシの葉の樹幹の樹皮。


カタギの木とは

山口県でも,アラカシは「カタギの木」といわれているのをご存知の方もいらっしゃると思います。カシ類は樹幹の材質が堅いためで,「堅木」と書き「木」と「堅」をあわせて樫の字ができていて中国にはない漢字です。カシは堅く丈夫なため様々な農具やハンマーなど工具の柄によく使われています。



コナラ属の化石

化石としては,山口県からコナラ属(Quercus)が今から約3500万年前の中~後期始新世の宇部層群沖ノ山層からCyclobalanopsis naitoiやQuercus sp.などの種が報告されています。Cyclobalanopsis(アカガシ亜属)は,現在一般的にはコナラ属の亜属とみなされています。コナラ属の化石の確かなのものは約4500万年前の中期始新世ものが最古とされています。

アラカシ(Quercus glauca)に比較される化石は,九州の後期鮮新統から産出し,アラカシの属するアカガシ亜属Cyclobalanopsisの花粉も検出されています。アカガシ亜属の花粉は,コナラ亜属Quercusの花粉と異なっていて識別できます。


山口市秋穂二島にある栄泰寺境内のアラカシが県指定の天然記念物になっています。樹高14m,木の周囲が4mにもなる巨大樹だということです。





































































































































































































































































































































































































































































































































































































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