2020/11/22

山口県にもクルミ科の木が多く自生している;ノグルミの実体とは?(Living and fossil juglandaceous plants in Yamaguchi)


クルミ(胡桃)といえば一大産地の信州,長野県のような気候が比較的冷涼な地を想起しますが,下関市にもクルミ科の樹木がまさか繁茂していると想像されたことのない方も意外にいらっしゃるのではないかと思いますので,今回はクルミ科のノグルミについて解説したいと思います。

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写真_植物
長野県産のカシグルミの実(長径5㎝),右は種子を抜きっとった核果。




ノグルミ(野胡桃)


ノグルミPlatycarya strobilacea)は,ノグルミ属(Platycarya)のほかの種がほぼないといってよいので,英名ではPlatycarya(プラティケァリア)として通っています。1999年に中国から別種Platycarya longzhouensisが記載されています。

小葉や果穂(かすい)は,遠くから見るとカバノキ科のヒメヤシャブシに似ているので,見間違えやすいです。

次の写真は下関市の四王司山の山麓に自生しているノグルミの木です。



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ノグルミの木に生じた果穂(11月上旬)


ノグルミは,小葉のつき方など木の外観がクルミ属Juglans)やサワグルミ属Pterocarya)とあまり変わりませんが,やや小柄になります。小葉は,葉軸に5~7対ほど亜対生で生じています。



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ノグルミの木の葉(11月上旬)


ノグルミは,次の写真のような球果状の果穂を生じ,密生する披針形の苞の内側に堅果がありますが,クルミ科とはいえ残念ながら食用にできません。食べられるオニグルミとは亜科のレベルで識別されています。



写真_植物
ノグルミの果穂

堅果には翼(小苞)が癒着していて,この翼が風を受けることによって種が遠くへ運ばれます。





ノグルミの木の樹皮は次の写真のように,縦に割れ目が入り,厚みがあり耐久性があります。ノグルミの老木は,焚くと多くの植物に含まれるセスキテルペンやバニリン(バニラの香りの主成分)による芳香があり,福の神を呼ぶために焚く習慣があったようで,中国地方では身近な植物だったようです。



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ノグルミの木の樹皮の特徴(11月上旬)


次の写真はオニグルミ(鬼胡桃)の木です。学名は,Juglans mandshurica var. sachalinensisで,カシグルミほど大きくはならないですが径3㎝くらいの食用にできる実が生ります。



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知人から4年前にもらい受けたオニグルミの実を植えて育った木

オニグルミは,山を歩いていてもなかなか出会わない木ですが,北海道から九州の山間部の川沿いに自生するようですので,山口県からも探せば見つかる木なのかもしれません。



ノグルミ属の植物はいつ頃から存在した?

ノグルミ属(Platycarya)の化石は,世界的には前期始新世のものが最古とされ,アメリカ,ダコタ州のPlatycarya americana(5300万年前)やイングランド南部のPlatycarya richardsoni(4700万年前)などが記載されています。

山口県では,中期始新世の宇部層群沖ノ山層の下部の三尺層と中部の五段層(約4500~4000万年前)からPlatycarya hokkaidoanaの小葉の化石が産出しています。

ノグルミ(Platycarya strobilacea)そのものの化石は,大分県の前期更新世の湖沼成層などから報告されています。




































































































































































































































































































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