下関市では11月中頃に入るとロシア極東から越冬で渡ってきたシロハラが山林でチャッ,チャッ,チャッ,・・・チョッ・チョッ・チョッ・チョッと鳴いている声が聞こえ始め,林下で採餌をしています。今回は,シロハラの行動パターン,色々な場面での鳴き方などについて解説してみたいと思います。
マキの木にとまるシロハラ(3月下旬) |
シロハラ(白腹)
シロハラ (Turdus pallidus)は,英名でPale Thrush。
シロハラの他の鳥との競合
11月中旬,シロハラは冬鳥としてロシアの極東のほうから越冬のために渡ってきます。それまではウグイスが低木の茂みや竹籔でチャッ,チャッ,チャッ,・・・と地鳴きをしていますがウグイスのほうが圧倒されてしまい,周年留鳥のヒヨドリと競合するようになります。
シロハラは,山では枯れ葉の下をクチバシであさって昆虫などを食べており1羽で行動しているのをよく見ますが,数羽いるときはしきりに鳴き合っています。チャッ,チャッ,チャッ・・・と鳴きまねをしてみると様子を見にきてグピ,グピ,グピ・・・っと鳴き驚いた様子で飛んでいきます。最初はシロハラも警戒心が強く姿を見ることが難しいのですが,日を追うごとに慣れてきて姿を見せるようになります。
シロハラが住宅地へ
年が明けると,2月頃に山から平坦地にも行動範囲を広げ宅地を訪れるようになりミミズなどを探して食べていますが,警戒心が強く視線を送るとすぐに飛んでいきます。
眼と耳を研ぎ澄ませて地面をみつめるシロハラ(3月下旬) |
ミミズを採餌中のシロハラ(3月上旬) |
ときどき水場に体をつけて水浴びをしていることがありますがその様子が独特です。尾羽を広げて振動するように長時間,震えています。おそらく,羽についた汚れなどを超音波洗浄機のように細かい振動でふるい落としているのでしょう。
水浴中のシロハラ(3月上旬) |
鳥は,羽に撥水機能をもたせるとされる脂粉というものが尾脂腺から分泌され,ヒトの頭皮と同じように皮膚からフケも生じます。脂粉やフケは,ウイルスを媒介し鳥から鳥へ空気感染させることもあります。鳥は,羽毛などに蓄積した脂粉やフケを,定期的に水浴びによって体から取り除いているのでしょう。
ガラス窓へのバードストライク
3月上旬以降に自宅にいた時ですが窓に何か衝突したような大きな音がしました。時々,虫が窓にぶつかりカチッという音がすることはよくありますが,外をのぞくと大変なことになっていました。
窓に衝突後のシロハラの様子(3月上旬) |
1階の窓の下をみると,いつも山で見ていたシロハラがあお向けになって転がっていました。窓に外の景色が映り錯覚を起こしてぶつかってきたのでしょう。鳥が飛行機のエンジンに入り込んでエンジントラブルを引き起こすことをバードストライクといいますが,窓や鏡面状の外壁などへぶつかることもバードストライクと呼ばれ,街中でまれに見られます。
最初5分くらいはシロハラも動けず,息も粗い状態で次第に両足が少しもがくように動けるようになり,10分後くらいにはどうにか起き上がることができました。脳震盪(のうしんとう)を起こしているため起き上がった後に回復するまで20~30分ほどかかりました。そのとき,同伴のシロハラも1羽いたのですが,一緒にぶつかって軽傷で済んだのか,4mくらい先の庭石の陰でずっと心配そうにこちらを向いたままで,目を合わせても驚いた様子でフリーズしています。そのとき写真を撮っておこうと窓越しにレンズを向けても反応がなく,窓を開けたのですが同伴のシロハラもしばらくそのままでした。夕方で霧雨がわずかに降っていましたが,その時撮影したのが次の写真です。
窓に衝突してしばらく経過したシロハラ(3月上旬) |
まだ足もおぼつかない状態でした。しばらくシロハラと見つめ合っている状態が続きました。起き上がって30分ほどすると,同伴のシロハラが飛んできて一緒に飛び立っていきました。
シロハラなどの野鳥は,捕獲すると鳥獣保護法によって処罰されるそうですので,保護目的であればよい可能性がありますが,気を付けなければなりません。しかし,保護という名目で地面の上でじっとしているヒナ鳥を捕獲してはいけません。これは巣立ちしたヒナが親鳥の運んでくる餌をじっと待っているだけの場合がほとんどです。テレビなどのメディアでは自然界のことには手出し無用といわれますがこれは業務上の口実にすぎず,このような場面に遭遇することはまれですので,保護はいけませんが他の動物に襲われそうな場合は何かの縁と思い確実に命を助けられる場合は手を貸してあげるのも良いと思います。
後日,山でシロハラが1羽,竹籔から“キューッ”とかぼそい声で鳴きながら飛んできて,じっとこちらの様子を伺っているようでした。その後,シロハラと思われる茶色の羽が散乱しているのに気がつきました。
散乱していたシロハラの羽毛(3月上旬) |
窓にぶつかったシロハラかどうかわからないですが猛禽類に翼のあたりをむしられたような状態でした。野生で生きることは常に命懸けで過剰と思われるほど周囲を警戒する理由もこのとき実感しました。
シロハラのさえずり
4月に入り夜が明けて朝6時前頃になると,ヒョロヒョロ,ヒョロヒョロというような鳴き声で鳥のさえずりが聞こえてきました。どのような鳥なのか気になっていましたが,4月15日にその鳥がさえずっているところを撮影したのが次の写真です。
さえずっていたシロハラ(4月中旬) |
4月20日の朝6時前,シロハラの地鳴きが聞こえてきたので舌鼓で鳴きまねをしてみると地鳴きがさえずりに変わりました。シロハラは晩春の5月上旬には繁殖を行うロシア極東のほうへ帰還しますので,さえずりの予行練習のようなものでしょう。
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