エナガは,下関市では山に登ると時々群れと遭遇することがありますが,鳴き声を聞き慣れていない方はどんな鳥なのかなかなか気が付かないと思います。2月~3月に梅や桜の花が咲く頃に4~5羽ほどの群れが林縁部でよくみられるようになり,ほぼ定刻に飛来し虫などを採餌しているのが見られます。今回は,住宅地ではまれなエナガについて解説してみたいと思います。
四王司山で群れで生活するエナガの地鳴きをするシーン(8月下旬) |
エナガ(柄長)
エナガ(Aegithalos caudatus trivirgatus)は,英名でLong-tailed tit,長い尾羽のあるシジュウカラ科の小鳥という意味ですが,エナガはエナガ科に属します。学名の「Aegithalos」は古代ギリシャのアリストテレスがエナガなどの小鳥に対して使っていたようです。「caudatus」はラテン語の形容詞で末端に尾のような付属物をもつ,つまり「尾のある」という意味です。エナガ属は世界で18前後の亜種が報告されており,本州に分布する亜種「trivirgatus」はラテン語の形容詞で「3つの筋のある」という意味で,Temminck et Schlegel(1848)によるかなり古い記載になりますので,恐らくエナガを上から見て黒い縞(<眉斑>背筋~尾羽,翼の前縁部)が3本に見えるところから付けられたと考えられます。側面から見ると2本に見えます。20世紀に入ってから対馬・壱岐のチョウセンエナガ,九州・四国のキュウシュウエナガが記載されていますので,北方系の北海道のシマエナガを除き,本州以南に分布する南方系の3亜種,エナガ,キュウシュウエナガ,チョウセンエナガはすべて類似した特徴をもっています。
2018年3月18日,エナガがNHKの『ダーウィンが来た!』(毎週日曜夜7:30-8:00放送)でとりあげられていましたが,それによるとエナガは天敵のヘビが冬眠から覚める前に子育てを始めるそうです。巣をクモの糸で編んだり出入りする姿や,エナガのヒナが連なって温め合っているエナガ団子も見られました。体重が平均7 gほどでミソサザイよりも体重が軽いのですが,ひしゃくの柄のような長い尾羽があるため体長が少し長め(10数㎝)になっており,比較的大きいというイメージがあります。エナガは国内最小で最も軽いといわれるキクイタダキよりも少し重く,尾羽を除くとひとまわり大きめくらいです。
秋~冬の間,エナガは大木の高所で4~5羽の群れでジュリリ・ジュリリと鳴きながら飛び回っているのをよく見かけていましたが,今年は寒さが厳しく梅の花も2月下旬に咲き始め,花がほとんど散ってから近くまで降りてきてくれました。蝶やバッタなどの昆虫の活動開始の遅れも影響したのではないかと思います。
次の写真ですが,新緑の葉が萌芽しはじめてから飛んできてくれました。
梅の木に採餌のため飛来したエナガ(3月下旬) |
飛んできてくれたのには事の発端があります。エナガはこの時期,2羽のつがいで生活しているようです。夕方,となりの竹籔の中からエナガの鳴き声が聞こえてきたので望遠レンズを構えて探していると,1羽のエナガが興味をもったのか飛んできてそれにつられてもう1羽飛んできてくれました。おそらく今年は寒さのためエナガの子育ての開始も遅れたのではないかと思います。
方向転換をするエナガ |
初春には樹高20mほどある山桜がきれいに咲いておりシロハラやメジロ,ヒヨドリ,シジュウカラ,コゲラとひしめきあって生活しているのがみられます。
山麓の山桜に飛来したエナガ(3月末) |
ヤマザクラは,花と葉っぱが同じ時期に咲き開くという点で,一般的によく桜と呼ばれるソメイヨシノと異なります。
次の写真は,四王司山山頂にある四王司神社へ参詣する小道で遭遇したエナガの群れの中の1羽を撮影しました。
四王司山中腹で観察されたエナガの群れの1羽(8月下旬) |
エナガは秋から初春にかけて寒い時期に低地の林縁部まで降りてきてよく観察できますが,普通は山地の奥で生活しているようです。
エナガ属の化石はいつ頃から出る?
エナガ属(Aegithalos)の化石は,ハンガリーの後期中新世の地層からAegithalos gasparikiが報告されています。
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