2020/11/01

四王司山のシイ・カシ林において観察された2種のテングタケ属の白いキノコ:シロオニタケ&コトヒラシロテングタケ,下関市


ここ数年の間,夏と秋にツブラジイ,マテバシイ,アラカシ,コナラといった樹木などの繁茂する下関市の四王司山塊の林縁部の森の中を歩いている際に白い大きな見栄えのするコトヒラシロテングタケとシロオニタケというキノコを見つけましたので紹介したいと思います。四王司山は古代から長い歴史をもつ山で,山の大部分が神社の境内ともいえる土地で何でもない所に立ち入ると,時には祟りがあるといった神聖視すべき山であると感じています。


写真_キノコ
下関市の山中で見つかったシロオニタケ(9/28)。




シロオニタケ(白鬼茸)


シロオニタケAmanita virgineoides)は,英名でfalse virgin's lepidella。テングタケ科に属し,テングタケ属(Amanita)は,テングタケ亜属とマツカサモドキ亜属(lepidella)に分けられていて,シロオニタケの英名は,種名からもわかるように「偽のVirgin lepidella」という意味になります。Virgin lepidellaは,Amanita virgineaの英名です。Amanita virgineaはシンガポールやインドネシアといった熱帯地域に分布しますが,シロオニタケは,日本や朝鮮半島に分布しています。

シロオニタケは,ササクレシロオニタケ(Amanita cokeri f. roseotincta)やスオウシロオニタケ(Amanita timida var. suouensis)に似た点もあり,混同されることもありがちなのではないかと思います。


写真_キノコ
ひだの露出していない頃のシロオニタケ(9/28)。

傘の柄がささくれていますが,ササクレシロオニタケは下に向かって細かくカールしますので,上の写真の場合と異なります。

傘の表面にはシロオニタケの名の由来ともいえる鬼の棒のような尖った疣状突起(いぼじょうとっき)が密生しますが,脱落しやすく雨に打たれたりすると下のような写真の状態になります。傘の一部分が食べられてしまっていますので,ヤマナメクジなどが傘の上を這いまわっって突起がなくなったのかもしれません。ナメクジなどが食べるくらいですので毒性はないと思いますが,食用にはされていません。ナメクジだけでなく,コガネムシの仲間やゴミムシダマシの仲間などの甲虫もキノコを好んで食べるものもいます。

傘の柄の根元のまわりの肥大した部分にも疣状突起がたくさんついています。


写真_キノコ
いぼ状突起のなくなったシロオニタケの傘の表面(9/28)。


次の写真のように傘の裏側の被膜にも表側と同様ないぼ状突起がたくさんついています。


写真_キノコ
シロオニタケの傘の裏側(9/28)


傘が開くと,傘の下の被膜が破れてひだが見えるようになります。そうすると,「つば」が膜質の場合,垂れ下がるようにぶら下がった状態で観察できます。




コトヒラシロテングタケ(琴平白天狗茸)


コトヒラシロテングタケAmanita kotohiraensis)は,英名でKotohira Lepidella。香川県の琴平町の地名にちなんでつけられた名前で,日本では関東山地以西に普通にみられるようですが,北緯35°以南の中国南部にも分布し強毒性のキノコとして知られています

コトヒラシロテングタケの発生は7月上旬ですので,朝鮮半島にも分布し9月下旬発生のシロオニタケよりも暖かい気候を好むキノコなのかもしれません。



写真_キノコ
下関市のナラ・カシ林で観察されたコトヒラシロテングタケ(7/10)。

傘の表面には,つぼ(外被膜)の破片が取り残され,土がついているのが特徴のようです。傘の回りにも所々ぶら下がっています。


写真_キノコ
コトヒラシロテングタケの傘の表面(7/10)。


下の写真では傘のまわりには傘の内側の内被膜が垂れ下がっているのが見られます。内被膜が破れてできた「つば」も残っています。ひだは密です。


写真_キノコ
コトヒラシロテングタケの傘が開きひだが露出したところ(7/10)。

次の写真は,コトヒラシロテングタケの柄の基部に寄り添ってつぼの中から小さいキノコが発生中ですが,破れかけた外被膜に土がついているのがわかります。これが傘の上に破片状になって残ります。


写真_キノコ
コトヒラシロテングタケの根元付近(7/10)。


キノコも色々な色や形,発生の仕方のものがあってたいへん興味深いです。





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