下関市においても今年晩秋,青白色を呈する“雪虫”が観察されました。雪虫はトドノネオオワタムシが代表的ですが日本では北海道や東北地方に多く発生するということで,初雪の前兆を知らせるともいわれる昆虫です。今回はトドノネオオワタムシに類似しているヒイラギハマキワタムシを写真で紹介したいと思います。
ヒイラギハマキワタムシの発見時の写真(11月下旬) |
ヒイラギハマキワタムシ(柊葉巻綿虫)
ヒイラギハマキワタムシ(Prociphilus osmanthae Essig et Kuwana, 1918)は,アブラムシ科オオワタムシ属の昆虫で,日本で俗に雪虫と呼ばれています。学名の「Proci」は,恐らくギリシャ神話における「ペネロペの求婚者」のことで,「-philus」はギリシャ語で「-を愛する・好む」を意味します。属名のProciphilusの命名者はドイツの昆虫学者です。ペネロペ(女性の名前)のつく動物にドイツの沿岸部やドナウ川沿いに越冬のため秋に飛来するヒドリガモ(Mareca penelope)がありますので「Proci」はヒドリガモのオスを指すのかもしれません。日本ではマガモが水面に大量に浮く雪虫を食べている姿が目撃されています。種名の「osmanthae」は寄主植物であるモクセイ属を意味します。ヒイラギハマキワタムシは本州,四国,九州などに分布しています。
次の写真の個体の体長は5㎜ほどで,意識して見なければ綿くずのように見え,ワタムシだとは気が付かなかったと思います。ヒイラギハマキワタムシは,ヒイラギ・キンモクセイ(モクセイ科)やヒイラギナンテン(メギ科)などの葉に寄生するそうです。次の写真ではクマザサの葉にとまっており,クマザサが群生していましたので,針葉樹のかわりにこのクマザサで生活していたのでしょう。これから次の世代の寄主となるモクセイ科などの木へと飛び立つところだったのかもしれません。
ヒイラギハマキワタムシのズーム |
雪虫で代表的なトドノネオオワタムシは,越冬卵から孵化しヤチダモなどモクセイ科の新葉に寄生して育ったメスが晩春に交尾をせずに産卵をして増殖し,北海道ではトドマツ(モミ属)の根に翅をもったメス個体が飛来して寄生するため,和名のトドノネオオワタムシの名があるようです。秋になると丈夫な越冬卵を産む必要があるため,交尾をしたり次の代の寄主となるモクセイ科の木をさがして移動するための翅を備えたオスとメスが発生します。トドノネオオワタムシは北海道・東北辺りでは秋に大発生することがあり,雪のようにふわふわと浮遊し積もることもしばしばあるそうです。
ヒイラギハマキワタムシの前面 |
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