サルトリイバラ(猿捕茨)
サルトリイバラは,ユリ目サルトリイバラ科シオデ属に属する多年生植物です。イバラの名がついていますがバラの仲間ではなくイネ科が属するような単子葉類に入ります。
学名は,Smilax china L.で,英名はChina root。Smilaxは,「-ax」で終わる主格の女性形の属名で,ギリシャ神話における森や谷などに宿る精霊のニュンペーに由来します。ニュンペーは元々若く美しい女性で恋愛関係にあったクロッカスが植物にされてしまったことでシオデ(bindweed)に化身したと云われています。サルトリイバラの仲間はトゲがあることで森などを守っているという意味でSmilaxの名が付いたと考えられます。
英名のChina rootは,サルトリイバラの根茎がサポニンを含むため中国では菝葜(ばっかつ)と呼ばれ利尿・解毒などに効く薬として利用されたことに由来すると考えられます。
猿捕りいばらの名はトゲに猿が引っかかるイバラという意味になります。
サルトリイバラは雌雄異株で,次の写真は雌株に咲いた花で,花柱は3つあります。雄花には雄しべが6本あります。
日本では,Smilax hokkadoensis Tanaiが釧路炭田の主要炭層を挟む中期始新世のBartonian期の浦幌層群春採層(約3900万年前)から産出しています。新生代の中でも始新世はかなり温暖であったことが知られていますが,Bartonian期は寒冷化している時期でまだかなり温暖な気候下にあったようです。後期漸新世に温暖化のピークがきますが,その後,同じくらいの気候レベルに回復した前期中新世後期~中期中新世初期の台島型植物群を産出する地層から各地で産出し始めます。シオデ属といっても様々な形態の種類がありますが,中でも日本の現生種のサルトリイバラに近縁の種としてSmilax trinervis Moritaが知られています(藤岡・植村,1979)。ほかの台島型のタクサとしてSmilax minor Moritaがあります。
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