5月の初めから6月にかけて,カヤや,葦,ダンチクの繁茂した茂みでギョギョシ,ギョギョシと蛙のような鳴き声が聞こえてきます。これは夏鳥のオオヨシキリで,カッコウに托卵されることでよく知られています。今回はオオヨシキリについて解説します。
カヤの茎にとまるオオヨシキリのオス(6月上旬) |
オオヨシキリ(大葦切)
オオヨシキリは,ヨシキリ科ヨシキリ属の鳥類で,学名はAcrocephalus orientalis,英名は,Oriental reed warbler。直訳すると「東洋の葦(原<よしはら>で)さえずる鳥」になります。オオヨシキリは「warbler」という英名がついていますが,「warbler」を英語の辞書で引くとヨーロッパのウグイス科の鳥やアメリカムシクイの類に対して用いられるとされています。従来,オオヨシキリはウグイス科とされてきましたが,近年では本科とは遺伝子系統学的には異なるグループのヨシキリ科に属するとされています。「warbler」の英名は,厳密にはウグイス科,メボソムシクイ科,セッカ科,センニュウ科,アメリカムシクイ科といったウグイス上科に属する鳥に付けられていますので,「warbler」はウグイス上科の鳥を意味するといったほうが良さそうです。オオヨシキリの見た目はどの科の鳥に似ているかというと,ウグイス科やメボソムシクイ科になります。
正面から撮影したオオヨシキリ(5月中旬) |
鳴き声は,ギョギョシ・ギョギョシなどと蛙の鳴き声のようなさえずりをします。
草叢で囀るオオヨシキリのオス(6月上旬) |
縄張り争いをするオオヨシキリ(6月上旬) |
湖畔のナワシログミの枝にとまってさえずるオオヨシキリ(6月上旬) |
ヨシキリ属の小鳥はいつ頃からいた?
鳥類の化石は非常に希少で,ヨシキリ属の化石では唯一,ハンガリー,パンノニア盆地の後期中新世Tortonian期(約1160万~725万年前)のEdelény層(Edelény Variegated Clay)からAcrocephalus sp.が産出しています。河川や湖沼,湿地からなるデルタ平野の地層から見つかっていますので川沿いや湖沼周辺の湿地などに葦などが繁茂していたことでしょう。
この時代は山口県でいえば,長門市の向津具半島に分布する向津具礫層の堆積とこれを覆う山陰火山岩に属するアルカリカンラン石玄武岩が噴出した時期になります。これらの地層や火山岩は,中の森地区などの棚田の基盤になっています。
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