ウメエダシャク(梅枝尺)
学名は,Cystidia couaggaria couaggaria (Guenée, 1858)
英名は,Plum cankerworm mothで,チョウ目シャクガ科エダシャク亜科サイスティディア属に属する蛾です。
英名の「Plum」はセイヨウスモモ,俗に梅を指し,「cankerworm」は,シャクトリムシとかエダシャクを意味します。
属名の「Cystidia」(ツィスチジア)はラテン語の中性名詞「Cystidium」の複数形で,「Cyst 」は「嚢胞」,「-idium」は「小さい」を意味しますが,ラテン語の「Cista」(箱)と混同されることがあるようですので,この場合は「複数の小さい箱」を意味するものと思われます。というのも,サイスティディア属の卵は次の写真のように箱型をしているのが特徴になります。
シャクトリムシは梅の葉を加害しますが樹勢が強ければそれほど目立った被害はなく,幼虫から蛹,成虫に至るまで黄色を基調とした黒色の斑点模様をしていて魅力的で親しみやすい蛾です。幼虫は,ウメだけでなくサクラ,セイヨウミザクラ(桜桃)など他のバラ科の植物についているのが見られることもあります。
梅の枝を這い回るウメエダシャクの幼虫(5月下旬) |
梅の葉の上にみられた蛹(5月下旬) |
羽化したあと抜け殻のそばで羽を乾かしているウメエダシャク(6月上旬) |
上の腹部の大きい方がメスで,オスの方は体型がほっそりとしています。
梅の木の葉にとまって交尾をするウメエダシャク(6月中旬) |
シャクガの化石はいつ頃から出る?
シャクガ科の化石で最古のものは,ニュージーランド南島のカンタベリー地方の後期白亜紀のMonro Conglomerate層(Turonian期の約9400~9000万年前)からHelastia ? sp.が産出しています。
最古のエダシャク亜科になると少し時代が上がりますが,ロシアの飛地,バルト海に面したヤンタルヌイにある琥珀鉱山の中期始新世(4400万年前)の地層から幼虫(シャクトリムシ)の化石,Eogeometer vadensがFischer et al. (2019)によって記載されています。この鉱山の琥珀はバルチック・アンバーと呼ばれています。
エダシャク亜科の最古の化石が産出する時代は,山口県でいうとちょうど琥珀の出る宇部層群宇部夾炭層の時代になります。
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